猫の予防【前編】猫のワクチン(予防接種)の種類について
2025-12-01
わたしたち人間と同じように、猫ちゃんの病気を予防するためのワクチン接種は、
健康を守り長生きにつなげる重要な手段です。
重篤化・致死率の高い感染症から愛猫を守るためには、
科学的根拠に基づいた個別化ワクチネーションが欠かせません。
特にインターネット上では、「完全室内飼いだからワクチンは必要ない」「ワクチンは3年に1回で十分」といった言葉を目にすることがあります。確かに部分的には科学的根拠に基づいた意見なのですが、その一部だけが切り取られて広まり、誤解を招いているのが現状です。
前編では、猫のワクチンで予防できる病気の種類や症状についてを国際的なガイドラインと国内の事情を交えて詳しく解説します。
世界小動物獣医師会(WSAVA)などの最新指針では、全ての猫に推奨される「コアワクチン(必須ワクチン)」と、生活環境によって必要性が変わる「ノンコアワクチン」に分類されます。過剰接種を避ける観点から、成猫のコアワクチンは低リスクなら3年ごと、ただし高リスク猫では年1回も検討とされています。
コアワクチン(必須ワクチン):全猫に必要
- 猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症:FPV)
猫パルボウイルスによる急性胃腸炎。特に子猫は致死率が非常に高く、数日で急速に悪化することもある。
- 猫ウイルス性鼻気管炎(FHV)
猫ヘルペスウイルス1型による「猫風邪」の原因の1つ。くしゃみ、鼻水、目やになど。子猫や高齢猫では衰弱して命に関わることもある。
- 猫カリシウイルス感染症(FCV)
猫風邪のもう一つの原因。口内炎や舌の潰瘍が特徴で、肺炎を併発すると致死的。
ノンコアワクチン:生活リスクに応じて
- 猫白血病ウイルス感染症(FeLV)※
接触や咬傷、母子感染で広がり、持続感染によりリンパ腫や重度の貧血を引き起こす。特に子猫では必須とされる。
※ 『屋外に出る猫』『外出する猫と接触する猫』では、FeLVワクチンもコアワクチンとして推奨されています
- 猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ:FIV)
咬傷で感染し、数年後に免疫不全が進行する。
国内ワクチンはすでに販売終了。
- 猫クラミジア感染症(Chlamydia felis)
結膜炎を主体とする感染症で、多頭飼育環境では流行しやすい。子猫では肺炎の危険もある。